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デザイン マネジメント(デザイン思考)による地方再生

デザイン思考が地域の問題を解決に導く
名古屋市の隣にある愛知県長久手市は、住みやすい町調査で「快適さ」や「子育てがしやすい」といった項目で日本全国1位の町で人口流入が続いています。
人口は5万人程度で、各地にありそうなベッドタウンなのですが、市長を中心にデザイン思考(デザインシンキング)に必要な「洞察」「観察」「共感」のプロセスを繰り返しながら住民と共に町の問題解決に臨む姿勢が確立しつつあります。
<長久手市の事例>
長久手市の住宅地付近の雑木林にガイガラムシという害虫が大量発生しました。
この場合、住民から市役所に苦情が寄せられ市役所の職員は殺虫剤をもって現場に向かい害虫を駆除するのが普通だが、長久手市役所はそのような方法はとりませんでした。
長久手市役所がとった方法はまず、専門家を呼び徹底的に調査をさせました。
その結果、ガイガラムシの大量発生はその4年前に別の害虫を駆除するときに使用された殺虫剤によってガイガラムシの天敵であるコバエを死滅させてしまったことが原因だと判明したのです。
今回も同じように殺虫剤によって駆除してしまうとさらに生態系が崩れ、別の害虫の大量発生を招く可能性があるので、どうしても大量発生を止めたいのなら雑木林を伐採するしかないということも専門家によって結論づけられました。
駆除をお願いしようとした住民たちはとても困惑しました。
住民たちはせっかく美しい雑木林付近に好んで新築を買ったのに、その雑木林がなくなってはそこに住居を構えた理由がなくなってしまいます。
その後、住民と市役所職員は何度も話し合いを行い、かつての雑木林の生態系を取り戻そうという考えになり、住民と市役所は一緒に対策にあたるようになりました。
行政経営にデザイン マネジメントを導入
長久手市長はこのように苦情がきたらすぐに排他的論理で対応する役所としての機能に疑問を持ち、その役所の体質改善をするためにデザイン思考的(デザインシンキング)プロセスによって解決を目指す体制、つまり行政の経営(市役所)にデザインマネジメント的な経営方針をとりいれたのです。
そのデザインマネジメント的方針によって生まれたのが、立つ瀬が無いという言葉をもじった「たつせがある課」です。
長久手市を小学校区を6つに分けて、その各地に地域問題を話し合う拠点としての機能をもつ「地域共生ステーション」を設置しました。
ただ箱モノを作っただけではなく、住民が話し合って問題に取り組み、その解決策に予算をつけていくという市役所機能を分割しました。
結果、「洞察」「観察」「共感」のプロセスを繰り返しやすい環境を整備することで、地域活性化を図ろうとしています。
問題に対して短期的な解決策は、短い期間には効果はありますが問題を先送りにしただけに済みません。
問題の本質をじっくり時間をかけて分析し、それに対しての解決策を住民を交えて話し合って決められる体制を作ることによって、住民や市役所職員が町を好きになり、今後問題が起きても解決できる体質へ変化した町は未来が明るい。
今回は、愛知県長久手市の行政経営(市役所)にデザイン マネジメントを導入した事例を紹介しました。
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