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新時代のプリンシパル(デザイン経営と知識創造の力)

現代ビジネスは、VUCA(不確実性、複雑性、曖昧性、急変性)の時代として位置付けられ、この予測困難な環境下での迅速な対応が企業の存在を賭けた挑戦となっています。ただの従来手法への依存を越え、イノベーションを追求する新時代のプリンシパルが必要とされています。そのキーとなるのが、デザイン経営と知識創造の力です。これらは、競争の激しいビジネス環境で差異と革新をもたらす新しいフレームワークとして、多くの企業から注目を集めています。

デザインマネジメントと知識創造経営

【知識創造経営】
 ・組織文化の形成:これは、組織が新しい知識やアイディアを受け入れやすい環境を作ることを指します。安全なフィードバック環境の提供や、失敗を許容する文化の構築などが含まれます。
 ・知識の共有:これは、従業員間での情報や知識の流通を促進することを意味します。ワークショップ、セミナー、または共有セッションの開催がこれに該当します。
 ・組織のネットワーク活用:社内外のネットワークを活用し、新しい情報やアイディアを取り入れる。
 ・創造的思考:これは、既存のフレームワークやパラダイムから外れて、新しいアイディアや解決策を模索するプロセスを指します。
 ・デザイン思考:問題を多角的に捉え、利用者の視点を中心に考え、プロトタイピングやテストを繰り返しながら最適な解決策を探るアプローチです。

デザインマネジメントと知識創造経営の融合の意義
デザイン思考は、従来のビジネスプロセスやマネジメント手法では捉えきれない緻密なユーザーのニーズや深層の課題を明らかにするための先進的なアプローチとして知られます。一方、知識創造経営は、新規の知識や斬新なアイディアを組織全体で総動員し、それを実際のビジネス価値へと昇華させる統合的フレームワークを持っています。これらの力を組み合わせることで、真のイノベーションを継続的に生み出す堅牢な仕組みを築くことが可能となります。特に創造的産業においては、ユーザーの微細なニーズや感じる感情を敏感に捉え、それを具体的なサービスや製品へと昇華させる能力が、競争の切り札となるのです。
知識創造の4つのステップ(SECIモデル)

step.1
知識の深化
知識創造の核心は、個人が持つ暗黙知と形式知が融合し、反復的なプロセスを通じて組織の知識を拡充する点にあります。この独特なフレームワークはSECIモデルと称され、野中郁次郎氏と竹内弘一氏の共同研究により紹介されました。

– 社会化 (Socialization):ここでは、対面の交流がキーとなり、個人の暗黙の知識が共有されます。例として、ベテランが新人に伝統的な手法や業界の秘訣を教える場面が挙げられます。
– 外部化 (Externalization):このステージで、暗黙の知識が具体的な形式知に変換されます。ここでの主要な道具は、言語やビジュアル表現で、考えや感情を明確に伝える技法が用いられます。
– 結合 (Combination):既存の形式知が組み合わされ、新たな知識や情報が生まれるステージです。たとえば、様々な部門からの情報を統合し、新しいビジネス戦略を策定することが考えられます。
– 内部化 (Internalization):ここでは、形式知が実践を通じて再び暗黙の知識として体得されます。これにより、知識は深く根付き、日常の行動や判断の一部として反映されます。

step.2
組織の学びの進化
組織の成長と発展のためには、絶え間なく学び続けることが求められます。この持続的な学びの流れの中で、組織が真に価値を生み出せるのは、しっかりとした学習体制と知識を尊重する文化が土台となるからです。組織内での失敗は、次回への成功への足がかりとなる学びの場として受け止められるべきであり、この受容の文化が新しいアイディアやアプローチへの積極的な取り組みを後押しします。

そのための具体的な学びの機会として、エキスパートが主導するセミナーやワークショップを定期的に行うことは、組織のメンバーに新たな視点や知識を提供する貴重な機会となります。さらに、デジタル学習プラットフォームの活用によって、学びの場を時間や場所の制約から解放し、柔軟な学びを実現することができます。

学びの過程で得られるフィードバックは、学習の中核をなす要素です。これは組織全体のコミュニケーションの質を高め、透明性を保つために必要不可欠であり、メンバー間のフィードバックを重視し、それを成長の契機として受け入れる姿勢が、組織の持続的な発展を後押しします。

step.3
知識の最適活用
知識の管理は、組織の競争力を向上させるための鍵となります。知識を整理し、効果的に共有し、必要に応じて再活用することで、その知識は真の資産としての価値を発揮します。そのためには、組織内での知識の流れをスムーズにし、アクセスしやすくするための効率的な仕組みの導入が不可欠となります。

具体的には、知識の体系化を通じて情報を構造的に整理すること、データベースを活用して情報を集約・保存すること、そしてメタデータを使用して検索効率を最大化することが重要です。メタデータにより、関連する情報を迅速に引き出すことが可能となり、必要な知識を的確に取得できます。

知識の管理は、一度セットアップして完了するものではありません。日々進化する情報を適切に捉え、その質を継続的に維持・向上させることが不可欠です。このためには、時代の変動、組織の拡大、技術の進歩といった多様な要因を考慮しながら、定期的に内容のレビューと更新を行う必要があります。常時、最新かつ高品質の知識を維持することこそ、組織の知識資産の真価を発揮する鍵となるのです。

step.4
イノベーションの推進
イノベーションは単なる新しいアイディアや知識の生み出しにとどまらない、その知識やアイディアを実際の市場での価値に変える力学として捉えられるべきです。このプロセスは、企業や組織が持続的に成長し、市場での競争力を維持・拡大する上で不可欠となります。

その実現のためには、組織のメンバーが持つ革新的な提案や視点を積極的に受け入れる姿勢が不可欠です。従業員一人ひとりが新しいアイディアや改善提案を自由に発信できる文化を築くとともに、それらのアイディアを実際に形にするためのリソースや支援体制の構築が求められます。

さらに、組織内だけの知識や視点に限定せず、外部からの新しい知識や異なる業界の視点を積極的に取り入れることで、より幅広い視野からのイノベーションを促進することが可能となります。オープンイノベーションの取り組みは、組織の境界を超えて外部のエキスパートや他業種の専門知識を活用することで、未見の問題解決や新しいビジネスチャンスの発掘に繋がる可能性を大いに秘めています。
知識創造経営×未来の資本
デザインマネジメントと知識創造経営の統合は、創造的産業において、新たな価値と持続的なイノベーションを生み出すための基石となります。これらの原則とプリンシプルを採用することで、企業は時代をリードする競争力を持ち、新しい価値創造の領域を拓くことができます。実際の成功事例や、おすすめの本『知識創造経営のプリンシプル – 賢慮資本主義の実践論』などを参考に、自社の状況や特性に合わせて革新的な戦略を策定することが求められます。

VUCAの時代におけるビジネスの戦略として、従来のアプローチに加えて、デザインマネジメントと知識創造経営の原則を採用することが極めて重要です。知識創造経営は、組織の文化形成、知識の共有と増強、そしてSECIモデルを中心として取り組みます。一方で、デザインマネジメントは、ユーザーセンターのデザイン思考の導入に重点を置きます。これら二つのアプローチの融合により、ユーザーの深層のニーズを掴み取り、新しい価値を創造することが可能となります。そして、組織全体としての持続的な学習と、オープンなフィードバックの文化が、知識の資産化とイノベーションの推進に繋がります。


<今回のオススメの本>

『知識創造経営のプリンシプル – 賢慮資本主義の実践論』
著者:野中 郁次郎 氏、紺野 登 氏

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